東京高等裁判所 平成9年(う)1184号 判決
被告人 平野泰巳
〔抄 録〕
本件速度違反の取締りについては、違反車両の測定時間、車種、塗色、車両番号、特記事項、走行速度などを、測定の順序に従って具体的に記録し、当日の取締りの流れを示す速度測定通報(受理)記録用紙が存在する。そして、木村巡査の当審公判廷における証言によれば、右記録用紙は、記録係をしていた同巡査が、本件当日の平成七年五月二三日午後八時四五分ころから翌二四日午前一時五七分ころまでの間に、測定された三二台の違反車両について、警報音が鳴ると同時に、速度記録紙に測定時分と測定速度が印字されて出て来るので、それを見て右記録用紙に違反時間と走行速度を記載し、車種、塗色、車両番号及び特記事項等に関しては、測定現認係の有馬巡査からの通報に基づいて分かる範囲だけを記載し、違反車両が停止した後に、自分の目で見たり、停止係の警察官から教えてもらって記載したものである(うち三台の違反車両については、逃走したため記載が不完全である。)ことが認められる。すなわち、右記録用紙のうち、違反時間及び走行速度の各欄は、木村巡査が、本件測定装置によって印字された速度記録紙に表示された測定時分及び測定速度を、同巡査の主観、作為等を入れることなく、機械的に記録したものであるということができるのである。したがって、関係各証拠によって認められる本件速度違反の取締りの状況等を合わせ考えれば、当審公判廷において取り調べた右記録用紙(謄本)の違反時間及び走行速度の各欄は、内容的に、本件測定区間を走行した不特定多数の車両を対象として速度違反の取締りを行った結果を機械的に記録したもので、ことさらに特定の車両に違反があったように虚偽の内容を記載したり、後から記載を改竄したりしたものではないと認められる。なお、右記録用紙(ただし、車種、塗色、車両番号及び特記事項等の各欄の記載内容を除く。以下同じ。)は、当審において、刑訴法三二三条二号により証拠能力が認められるとして、証拠として採用し、取り調べたものであるところ、弁護人は、警察官の作成した右記録用紙につき、同号を適用できるとするのは、現行刑訴法の当事者主義構造からして、相当でないというのである。しかし、右にみたとおり、右記録用紙は、警察官が作成したものとはいえ、本件測定装置が測定した特定時刻における走行速度を、作成者の主観、作為等を入れることなく、機械的に記録したものであるから、業務の通常の過程で作成されたものと認めることができるのである。したがって、右記録用紙につき同号により証拠能力を認めることに何ら誤りはなく、弁護人の右主張は、採用することができない。
(松本時夫 服部悟 高橋徹)